はじめに
ガールズバーは「合法なのか?」「どこからが接待で違法なのか?」という疑問は、開業前の方だけでなく、既に運営している店舗でも非常に多いテーマです。
SNSや口コミでは“ガールズバー=グレー”“摘発される”といった情報も多く、不安を感じるオーナーも少なくありません。
本記事では、ガールズバーの 合法ライン・違法ライン・風営法の基準・届出の有無・実際の摘発パターン を、専門的な視点でわかりやすく整理します。
開業準備中の方、既に店舗を運営している方のどちらにも役立つ内容です。
1. ガールズバーは合法。ただし「接待行為があると違法」

結論:ガールズバーという業態そのものは合法です。
日本の風営法では、
“接待行為(キャバクラ型の接客)を行わない” ことを前提に、
「深夜酒類提供飲食店」として営業できます。
つまり、
- カウンター越しの接客
- 一定距離を保ったトーク
- ドリンク・軽食の提供
これらに限定されていれば合法です。
反対に、
接待行為を行うと、風俗営業1号許可が必要(=無許可なら違法)
という構造になっています。
2. 風営法が定義する「接待行為」とは?

接待行為は、風営法により明確に定義されています。
一般的な“ガールズバーのイメージ”より範囲が広いため注意が必要です。
■ 接待行為に該当するもの(許可なしなら違法)
- お客様の隣に座る
- 身体を寄せる・触れ合う
- お客様と長時間マンツーマンで会話する
- 特定客に「特別な歓待」をする
- お客様がキャストを指名する仕組み
- ボックス席で密着した接客
- 過度なサービス(ゲーム・お酌など)
風営法では “実態” で判断されるため、
「店の肩書きがガールズバーだからセーフ」ということはありません。
■ ガールズバーで認められる範囲(合法ライン)
- カウンター越しの接客
- 飲み物の提供
- 軽度のコミュニケーション
- 一定距離を保った会話
- 指名制度の非導入
- スタッフが客席へ出ない運営
ガールズバーの合法性を守る上で最も重要なのは、“距離とサービス内容” です。
3. よくある摘発パターンと違法例

過去の摘発実例を分類すると、以下の3つが圧倒的に多いです。
① 実質「キャバクラ営業」になっている
外からはガールズバーの形に見えても、実態が接待行為の場合は即アウトです。
例:
- イベント日だけ隣に座る
- 延長指名・お気に入り制度がある
- 指名料を別名で徴収している
- ボックス席を使用している
- お客様の斜め隣に座り込む
“形”ではなく“行為”で判定されるため注意が必要です。
② 深夜酒類提供営業届を提出していない
24時以降も営業する場合、
警察署への「深夜酒類提供飲食店営業届出」が必須 です。
提出せずに営業 → 違法。
③ スタッフ教育不足による接待行為
オーナーが知らなくても、スタッフが勝手に接待行為をすると
店舗側の管理責任 が問われます。
例:
- 女の子が自ら客席に出る
- 特定の客と距離が近くなる
- 顧客が「特別扱いされている」と感じる行為
日常の営業の中で最も起こりやすい違反パターンです。
4. 一般的なガールズバーが守るべき「合法運営チェックリスト」

以下は実際のガールズバーで採用されている“合法運営の基本”です。
■ ① カウンターから絶対に出ない
もっとも重要なポイントです。
■ ② 指名・同伴などの制度を作らない
名称を変えても「実態」で判断されます。
■ ③ 深夜営業は必ず届出を出す
営業時間が長い店舗は特に注意。
■ ④ イベント時も例外を作らない
誕生日・周年は違反が起きやすい日。
■ ⑤ 店舗レイアウトを接待不可の形にする
- ボックス席を置かない
- 客席に行けない導線
- カウンターを固定配置
■ ⑥ 新人スタッフへ風営法教育を徹底
未経験者が多い業界では特に重要。
■ ⑦ 料金体系を明確にする
ぼったくり疑惑は“風営法以外”の行政処分につながることもあります。
5. よくある勘違いと正しい理解
❌「女の子が勝手に座っただけだからセーフ」
→ 店側の管理責任。違法。
❌「カウンター席でも密着していないから大丈夫」
→ 距離が近すぎると“マンツーマン接待”と判断されることがあります。
❌「指名料を別名にすれば問題ない」
→ 名称ではなく実態で判断されるためアウト。
❌「たまになら指名OK」
→ 一度でも接待行為があれば風俗営業に分類。
6. ガールズバー運営者が準備すべき法的書類・届出まとめ
ガールズバー運営には、状況に応じて以下が必要になります。
■ 必須になりやすい書類・届出
- 飲食店営業許可(保健所)
- 深夜酒類提供飲食店営業届出(警察)
- 防火管理者選任届
- 労働関連(雇用契約・36協定・給与台帳)
- 税務書類(開業届・源泉徴収に関する届出)
■ 条件によって必要になるもの
- 消防設備点検報告書
- 防火対象物使用開始届
- 消費税に関する届出
- 労災保険加入
- 社保加入(法人・規模による)
7. 合法運営のための「リスク管理の考え方」
ガールズバーは風営法の中でも、“形は合法・中身は違法になりやすい” 業態です。
そのため、以下の3つを徹底することが重要です。
■ ① “行為”ではなく“実態”で判断されると理解する
店の名前・肩書きよりもスタッフの行動が重要です。
■ ② スタッフ教育と店内ルールの統一
ルールは紙にまとめ、全員が理解する必要があります。
■ ③ 証拠が残る形で運営する
- 会計内容
- シフト
- 席案内
- トラブル対応履歴
これらが「いつ・誰が・どう動いたか」を説明できる状態が理想です。
まとめ
ガールズバーは正しく運営すれば合法ですが、
“気づかないうちに接待行為に該当してしまう” ことが最も大きなリスクです。
- 接客距離
- お客様との関わり方
- 指名制度の有無
- スタッフの教育
- 深夜営業届の提出
- 店舗レイアウト
こうした基本を守ることで、トラブルや摘発リスクを大幅に下げることができます。
法的基準を正しく理解し、安心して長く続く店舗経営を行ってください。

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